平成17年7月19日
陶磁器意匠研究所運営審議会・挨拶
皆様、こんにちは。意匠研究所・運営審議会へのご出席、誠にご苦労様でございます。
市議会を代表いたしまして、一言ご挨拶を申し上げます。
今年は、この意匠研究所と陶磁器産業界にとって、エポック・メーキングな出来事が2つありました。1つは、意匠研究所の卒業生である川上智子さんが、イタリアのファエンツアで開催された国際陶芸展でグランプリを受賞したことで、もう1つは、今セラミック・パークで開催されている第7回国際陶磁器展・美濃のデザイン部門で、ファクトリープロダクトがグランプリを受賞したことです。
1つ目のイタリアのファエンツアでの受賞は、川上さんの他にも、意匠研究所の職員を含む関係者が5人も入賞や入選を果たしました。これらの快挙は、長年に亘る意匠研究所の職員を初めとする関係者のご努力の賜物であります。意匠研究所の関係者が多数受賞されたということは、当研究所のレベルの高さを内外に示すと同時に、陶磁器関係者と若者に夢と希望を与えることになりました。受賞をお祝いする共に、感謝を申し上げる次第であります。
この6月26日、川上さんの受賞記念祝賀会が開催されました。その席で、東京国立近代美術館の金子賢治・工芸課長は、受賞に関して次のような挨拶を行いました。今回の川上さんの受賞は、西洋人が陶磁器の技術やデザインだけではなく、東洋人の精神性を評価したものであって、第2のジャポニズムの到来を予感させるものである。つまり、受賞は川上さんのみならず、日本の現代陶芸の精神性に与えられたものである、と述べました。
2つ目の第7回国際陶磁器展・美濃は、今回からデザイン部門をファクトリー・プロダクトとスタジオ・プロダクトの2つのカテゴリーに分けました。この日本初の試みによって、従来評価の難しかったデザイン部門の評価基準が明確となり、フェスティバルが大変分かりやすいものになりました。そして私は、グランプリはスタジオ・プロダクトの作品が受賞するもの勝手に予想していましたが、意外にもグランプリは、ファクトリー・プロダクトの作品でした。
私は、この受賞が陶磁器産業界に少なくない影響を与えるものと思っています。例えば、一品生産の作品よりも、大量生産の作品がグランプリを受賞したことによって、美濃焼を生産している工場労働者にも、グランプリを取れるチャンスがあるということを、証明したのであります。つまり、陶磁器産業の従業者に大きな夢と希望を与えることになったと考えています。
6月30日、私は授賞式のレセプションで、グランプリを受賞した井戸真伸氏にインタビューを試みました。彼は今回の展覧会で4つの作品が入賞や入選を果たしていますが、その内のグランプリと金賞の作品のコンセプトについて質問しました。口数の少ない彼が応えたのは、作品の技術が確かでデザインが素晴らしいのは当たり前で、その上で、何を表現するのかが問題である。グランプリは好きな花を表現したかったし、金賞は日頃気になっていた箸の置き方を考え工夫したもので、2年前から構想を練っていた、という返事でありました。
私は陶磁器に関して門外漢であります。しかし、2つの国際陶磁器展のグランプリを通じ、金子工芸課長の講評とグランプリ受賞者の井戸氏のコメントを聞くと、作品は確かな技術と洗練されたデザインをベースとして、作者の人生観や世界観、つまり生き方が表現されたとき、見る人に感動を与えるのではないか、と思った次第であります。
意匠研究所の関係者に置かれましては、これら2つの国際陶磁器展の成果と教訓を生かしつつ、今後陶磁器産業界の発展に寄与されますことを祈念しまして、私の挨拶と致します。