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平成16年12月議会 一般質問原稿

平成16年12月議会 一般質問原稿
 市民クラブの中道です。通告に従い市政一般質問を行います。質問は大きく3項目あります。1つ目は、なぜ多治見市行政の民営化は遅々として進まないのか。2つ目は、市民病院は多様な選択肢を検討しつつ再構築せよ。3つ目は、地方分権の本旨に基づき、団体自治のみならず住民自治の再構築を図れ、の3項目です。

 最初に、なぜ多治見市行政の民営化は遅々として進まないのか、について伺います。
今年10月、日経グローカルは全国自治体の695市と東京の23区を対象に、行政革新度ランキングを発表しました。行政革新度の調査は日本経済新聞社が平成10年から隔年で実施しているもので、今回で4回目になります。この調査で多治見市の総合ランキングは、前回の13位から大きく後退し、111位となりました。因みに多治見市より上位にある岐阜県下の都市は、12位の岐阜市、22位の大垣市、71位の可児市の3つです。

 多治見市は前回より順位が大きく後退しましたが、総合評価でもAAランクからAランクに評価が低下しました。そこで、何が評価を低下させ、順位を後退させたのかを調べるために詳細を検討しました。調査項目は、大きく透明度評価、効率化・活性化度評価、市民参加度評価、利便度評価、及び総合評価の5項目です。評価の区分は最高位の3Aから最低位のCランクまで9つのランクに分けられています。

 この調査結果によりますと、多治見市の透明度はAで評価が上から3番目、効率化・活性化度はBで評価が上から6番目、市民参加度はAで評価が上から3番目、利便度は3Bで評価が上から4番目です。これらを分かりやすく言えば、多治見市の透明度、市民参加度、利便度は「中の上」ですが、効率化・活性化度は「中の下」となります。

 評価が「中の下」となった効率化・活性化度の調査内容は、ごみ収集の民間委託、学校給食の民間委託、行政コスト計算の有無、行政評価での数値目標の有無と結果の事業や組織見直しへの反映有無、ISO9,000シリーズの認証取得の有無、情報セキュリティ・マネジメント認証取得の有無、職員提案制度の有無など、23項目でありました。

 これらの調査内容を見て分かりますように、多治見市の行財政改革は、第4次行政改革大綱を実施している段階においても、全国の都市の中で、「中の下」と客観的に評価されました。つまり、自らの血を流す改革が遅れている、との評価が執行部に下された訳であります。

一方、今年の6月10日、市長は第5次総合計画・後期計画で事務事業の縮減を行うと宣言し、廃止・縮小の事業を選定するために、各課に対し事業の影響度説明書の提出を求め、縮減対象事業を選定せよ、との事務連絡を行いました。

 市長の事務連絡の背景には、企画課と財政課が行った5次総・後期計画5年間の財政推計があります。この財政推計は、情勢をより厳しく推計したケース1と、より楽観的に推計したケース2の2つがあります。ケース1は、一般財源の減少が後期計画の5年間の累計で169億円、年平均で約34億円も減少すると予測したものです。ケース2は、一般財源の減少が5年間の累計で85億円、年平均で17億円の減少と予測したものです。

 推計した2つのケースのうち、楽観的な財政推計であるケース2の一般財源で、5年間の後期計画の事業を実施しようとすると、財源が平成19年度と平成21年度で不足することが判明しました。そこで企画課と財政課は、5,000万円以上の大規模事業総額の半分を削減し、中小規模事業の固定経費を3割、固定経費以外を6割、それぞれ削減する方針を立案し、各課に対し削減額を明示しました。この方針は経費節減で達成できる目標ではありません。

 これらの事業の影響度説明書を検討した結果、どのような事業が廃止・縮減されたのかは把握していません。しかし、私が9月議会の一般質問で、NPO団体の「構想日本」の指摘によってスクラップした事業にはどのようなものがあるのか、と質問したところ、安土桃山陶磁の里の作陶施設や公共テレビによる情報発信の廃止を検討している、との答弁でありました。

 私はこの答弁に違和感を持ちました。その理由は、財政推計によれば後期計画の大型事業の半分を削減し、中小規模の事業の固定経費の3割、固定経費以外の6割を削減しなければ、財政が赤字となることや、執行部が「構想日本」の基準で仕分けを行った結果、現在の事務事業のうち24%が不要であり、11%が民間で行っても良いという結果もでている中で、スクラップを検討している事業が、たった2つとは納得ができないからであります。

余りにも現実の厳しさを軽視した執行部の対応と言わざるを得ません。前述した日経グローカルの行政革新度調査結果からも分かるように、私は執行部自らの厳しい行財政改革がいま求められている、と考えています。

 そこで今回は、主に行政コストの縮減に最も大きな効果を発揮する事務事業の民営化について質問を行います。平成12年4月、地方自治経営学会は、地方行政への手引きとして、「公立と民間とのコストとサービスの比較」という報告書を発行しました。サブタイトルは「全国延べ316自治体からの報告とその分析」となっています。

 この報告書は、全国316の自治体の協力と平成10年度決算の分析により、自治体現場の声をもとに、「民間に切り替えてコストが半分程度に低下しても、サービス面は低下しない。むしろ場合によっては、民間の方がサービスが良い」と結論付けています。なぜ、民間に委託するとコストが半分になり、サービスが向上するのかの原因については、話が長くなりますので、ここでは割愛いたします。

 では、一体民営化によって、どの程度コストが縮減されるのか。報告書は次のように述べています。直営から民営にした場合、可燃ごみの収集はトン当たりの経費が44.6%にまで縮減できます。同様に、学校給食は47.4%、幼稚園・保育園の園児1人当たりの公費持ち出し額は27〜28%、上水道事業の浄水場は70.3%、下水道事業の終末処理場は47.6%のコストにまで縮減できます。また公の施設管理として、文化会館や体育館などの施設は72〜74%、老人福祉センターは86.1%、児童館は44.9%、コミュニティセンターは44.3%のコストにまで縮減できます。

 このように事業の民営化によって、行政は大幅にコストを削減することができますが、多治見市の民営化は進んでいるのでしょうか。先ほどの日経グローカルの行政革新度調査では、全国695市と東京23区の自治体のうち、78.5%の自治体が、既に「可燃ごみ収集の外部委託」を行っています。また、学校給食は33.5%の自治体が既に外部委託を行っており、来年度までに委託する自治体が11、現在委託を検討中の自治体も68市に上ると報告しています。

 また、報告書は、学校給食を委託することで行政コストが半分になりますが、そのことによって食の安全性を含めサービスの質の低下を懸念する声は殆どないと述べています。それらの事柄は多治見市でも、池田保育園の民営化によって経験済みの事柄であります。

 今議会に提出された平成15年度決算によれば、塵芥処理場費のうち人件費は3億7500万円です。仮に、この人件費が半分になれば、1億8750万円の財源が浮くことになります。同様に学校給食費は5億8900万円で、コストが半分になれば2億9450万円の新たな財源ができたことになります。同じように幼稚園と保育園が3割のコストになれば、それぞれ2億2400万円と9億100万円となり、合計で11億2500万円の財源を捻出したことになります。また、上水道事業のコストが7割になれば、7億1200万円が、下水道事業の終末処理場維持管理費のコストが5割になれば、1億6000万円の新たな財源を確保したことになります。

 これらのコスト縮減の合計は24億7900万円となります。つまり、以上に述べた事業を民営化することによって、新たに年間約25億円の財源を生み出すことになる訳で、この金額は企画課と財政課が推計したケース1、つまり最も厳しく推計した年間の財源減少額の34億円には及ばないものの、ケース2、つまりより楽観的に推計した年間の財源減少額の17億円より8億円も多い金額であります。

 このように、事業の民営化は行政コストを縮減する方法としては、最も効果的な手段です。このような手段を講じることなく、執行部は何故、市民サービスの向上にかかる大型事業の半分を削減し、中小規模の事業の固定経費の3割を、そして固定経費以外の6割を削減されようとするのか、私には理解ができません。

 以上のような観点から質問を行います。まず、第4次行政改革大綱の達成度合について、4点お伺いいたします。@この間にスクラップした事業には、どのようなものがあるのでしょうか。A外部委託化または民営化した事業には、どのようなものがあるのでしょうか。B計画のうち、できなかった事業には、どのようなものがあるのでしょうか。C平成15年度の目標達成率は幾らだったのでしょうか。

 さらに、事業の委託化と民営化について、5点お伺いいたします。@ごみ収集の民営化は、何時から実施されるのでしょうか。A学校給食の民営化は、何時から実施されるのでしょうか。B幼保一元化と民営化は、何時から実施されるのでしょうか。C午前中に下水道事業の公営企業化を目指しているという答弁がありましたが、私が主張したいのはあくまで民営化であります。そこで上下水道の民営化は、何時から実施されるのでしょうか。D9月に指定管理者制度が多治見市にもできました。公の施設管理は、何を何時までに委託されるのでしょうか。


 次に、大きい題目の2つ目で、「市民病院は多様な選択肢を検討しつつ再構築せよ」について質問を行います。私が市民病院について一般質問を行うのは、今回で3回目です。

1度目は平成11年の9月、「市民病院と県立病院の一体化構想について」と題し、平成10年4月に市民委員会から提出された「市民病院のあるべき姿に関する第2次報告書」に対する提案を述べました。同様な主旨の質問は、平成15年の6月議会で、三宅議員もご提案されています。

2度目は平成14年9月、「市民病院は真に市民の求める病院になれるのか」と題し、病院機能評価結果と対策、鶴賀前病院長が退職された理由、大学の医局医師派遣制度の問題、及び新しい病院の構想をお尋ねしたものです。因みに、今年の9月議会では、4人の議員さんが5次総の後期計画で「市民病院の整備方針を策定し、建設に着手する」との方針を受けて、新病院の構想について質問をされました。

9月議会での執行部答弁は、新しい病院については具体的な構想が最終的にまとまっていないので、現段階で市民委員会に諮ることもできない、というものでした。しかし、この問題は、前述した平成10年4月に市民委員会が答申して以来、7年間、全く前進がありません。

私の手元に、平成14年3月に執行部が作成した「多治見市民病院・庁内研究会・報告書」があります。それによりますと、最終章で「第5次総合計画の実施計画では、平成17年までに整備方針を決定する」と謳っています。

この間、いかに医療制度の改革があったにせよ、7年が経過してまだ整備方針が決まらない、ということは、一体どういうことなのでしょうか。基本的に執行部内においては、新しい病院を急性期入院患者型にするのか、それとも療養病床を必要とする社会的入院患者型にするのかの、せめぎあいがあったと、私は認識しています。

しかし西寺市長はその最終決断をされなかった、それが結果として、鶴賀前院長の退職の原因となり、その後の3年連続の赤字、特に昨年度の4億円もの赤字の間接的な原因であると、私は考えています。理由を述べますと、話が長くなりますので割愛しますが、いずれにしても市長の優柔不断が遠因であると、私は考えています。

そこで、病院の赤字を最小限に食い止めるために、できるだけ早期に新病院の整備方針を立案し決定していただくよう要望しつつ、質問を行います。新病院はできるだけ特色のある病院、単なる2次病院ではなく、1次病院や3次病院にない特色、例えば弱者、子供やお年寄り、及び障害者に優しい病院、そのような病院を構築していただきたい、と私は考えています。

質問は新病院の再構築の方向を探るために、その存続を含め多様な選択肢を考慮しながら行います。@市民病院を廃止できない理由は何か。A市民病院と県立病院を統廃合できない理由は何か。これは平成11年に質問した時、まともに答弁していただけなかったので、再度伺います。B市民病院を民営化できない理由は何か。C休祭日及び夜間の診療営業ができない理由は何か。D療養型病床群を併設できない理由は何か。E重症心身障害児・者用病床群を併設できない理由は何か。

さらに市民病院を建設するならば、具体的にどのような事柄を想定しているのかをお尋ねいたします。@建設用地はどこか。決定前ならば、候補地は市有地と限定するのか。APFIで建設できない理由はあるのか。この質問は他の議員も質問されていますが、私が想定しているのは特区を活用し、滋賀県の八日市市の市民病院を参考にできないか、ということです。B建設のスケジュールはどのようか。E医師の確保はどのように行うのか、です。


 次に、大きい題目で3つ目の「地方自治の本旨に基づき、団体自治のみならず住民自治の再構築を図れ」について、質問を行います。

憲法の第92条には、地方自治体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて行うこと、とあります。本来、地方自治の本旨は、団体自治と住民自治の2つの要素からなります。

今議会で提出されている第5次総合計画の全体の標語は、「市民の鼓動が響くまち」で、この標語の狙いは「市民との協働」です。しかし、総合計画は団体自治について言及していますが、「市民との協働」の根幹をなす住民自治の戦略と政策がありません。

計画体系図の第2レベルには、情報の共有、交流の場、市民参加と協働の仕組みとありますが、ボランティアやNPO、及び区・町内会等の自治組織をどのようにして振興し活性化するのか、という戦略的な政策・施策が全くありません。

また現在、市民委員会で検討されている自治体基本条例のバージョン2においても、市民の責任と権利を明記しつつ市政への参加を保証していますが、住民自治を機能させ振興する戦略と政策が全くありません。

少子高齢化が進行する地方分権時代にあって、「市民との協働」は必要なことですが、その根幹となる、いわゆる「近接及び補完の原理」を実現するために、区・町内会等の自治組織の再構築は不可欠であります。しかし、総合計画にも自治体基本条例にも、そのような観点が皆無です。

改めて、地方自治の本旨を実現するため、団体自治のみならず住民自治についても、論点を整理し制度設計を行った後、それらの政策・施策を計画に盛り込むべきである、と私は考えています。

住民自治の制度設計を行うにあたり、3つの視点があります。1つは現在執行部が採用しているもので、住民自治が団体自治を補完するものと位置づけ、住民参加や住民投票などの制度を整備する視点です。2つ目は住民自治が執行機関と審議機関と並ぶ第3極と位置づけ、政策立案を行う行政委員会とする視点です。

3つ目は、住民を生活の場の地縁で結ばれた人民と、自己実現を目指し教育や福祉の向上を目的として結ばれた人民の2種類に区分し、それぞれが自由に活動することを保証し奨励するために、制度設計を行うという視点です。地縁で結ばれた人民は、区・町内会を組織するであろうし、目的別に結ばれた人民は、NPO等を組織するであろうと想定する視点です。

私は3つ目の視点で制度設計したいと考えています。何故ならば、1つ目の視点は住民があくまでも行政の補完物でしかなく、下手をすれば住民が行政に利用される恐れがあるからです。2つ目の視点である行政委員会は、現在の住民が保有する情報量とその意識レベルでは、客観性を持った政策の立案が困難であり、結局事務方の政策誘導に従わざるを得ず、今でもよく見られるように、行政委員会は行政のお墨付き機関であり、アリバイ機関になる可能性が高いからです。

そのような立場から、8点の質問を行います。@住民自治の制度設計は誰が行うのか。A住民自治を構成する住民には、どのような種類の住民を想定しているのか。B団体自治と住民自治の役割分担は、どのようなものを想定しているのか。C住民自治の中で、区・町内会とNPOの役割分担は、どのようなものを想定しているのか。D地縁団体が地域自治区になり得ない理由はあるのか。E地縁団体や地域自治区と区・町内会を整合させる制度設計はできないのか。F住民自治を振興するための政策・施策には、どのようなものを想定しているのか。G住民自治を振興するための基本条例を制定する予定はないのか。

以上で、私の1回目の質問を終わります。